前回の記事では申請について書きましたが、今回は実際に陥りやすい違法増築について書きます。
物置・カーポートの未届
家の改築をするとしてもリフォーム会社や建設会社に依頼することが多いので、施主が申請漏れを心配することはないかと思います。
※知り合いの大工さんに頼むときはご自分でも申請について調べられたほうがよいかと、大工さんは法律のことをあまり知りません。
個人で実際に届出違反になりやすいのが物置やカーポートです。
申請対象となる規模
防火・準防火地域の場合:すべて
上記以外の地域:併せて10㎡以上
または用途上可分の建物
注意したいのが増築建物とメインの建物は用途上不可分の関係であることです。
要するに増築できるのはオプション建物だけで、住居+住居や住居+店舗といった形態はとれません。
一つの敷地に一つの建物が原則ですので、2棟住居を建てたいなどの場合は敷地を分筆する必要があります。
(敷地の最低限度を定めている地域も多いです)
カーポートは1台あたり15㎡くらいなので完全に対象になります。
柱と屋根だけのカーポートも建築物に該当します。
建築物として扱われない物置
建築物として扱われる物置は各自治体で基準が変わってきますが、奥行きが1m以内のもの又は高さが1.4m以下のものは、建築物に該当しません。
(集団規定の適用事例2017年度版参照)
これなら安心して設置できますね。
ただ各自治体で個別に定めている場合もあるので、不安な方は「市町村名 物置 建築物」で検索するか、建築指導課までご確認ください。
建築物とみなされない物置の例
川口市:奥行き1.0m以下 高さ1.4m以下
神奈川県:奥行が1m以下 高さ 2.3m以下 床面積2㎡以内
屋根と柱をつけたこんなサイクルポートも建築物になります。
ちなみにこのサイクルポートは10㎡未満ですが、
建築物に該当するのに基礎がないこと=違反建築物→撤去、されたそうです。
ちなみに基礎もなく置いてあるだけの物置だから建築物ではないという方がたまにいますが、基礎がなくても建築物です。
しかも10㎡以内の物置でも基礎は法的に必要です(ブロック基礎で可)
10㎡を超えると布基礎やべた基礎などが必要になります。
固定資産税は別の基準
物置やカーポートは固定資産税の対象にもなります。
しかし対象になるかどうかは基礎があるか、壁があるかなど建築基準法とはまた別の基準になってきます。
未届は違反、でも実際は・・・
ここまで書いといてなんですが、物置やカーポートで確認申請を出さない施主・業者がほとんどです。
コンプライアンスが厳しくなり徐々に変わってきてはいるそうですが・・・。
申請は建築士資格が必要だったり、ない場合は構造計算書やらいろいろな書類を作らなきゃいけなかったりと素人には現実的ではありません。
業者に頼むと15万から30万円くらいかかります。
時間に余裕があり竣工も遅れてもいいなら建築指導課と相談の上ご自分で申請するのもありかと思います。
中には端から申請なんて出す気もないのに「申請はこっちでうまくやっときますよ、へへへ」 とか言って恩を売ってくる業者もいます。
一応違反したら罰則がありますが、一般住宅の物置・カーポート程度ならせいぜい勧告されて取り壊しでしょう。
それもあるとしたら近隣からの苦情があったときか、あなたに嫌がらせをしたい誰かの通報か、役所が暇すぎる時くらいです。
漬け込まれるすきを作りたくない私は確認申請することをお勧めします。
届の必要がなくても法令遵守!
上記申請対象でないからと言って油断はできません。
確認申請が必要なくても法律に則った設計でなくてはならないのです。
違反しがちな事例
建蔽率・容積率
その敷地面積に応じて建てられる面積が決まっています。
建蔽率:真上から見た面積の割合
容積率:すべての階の面積(延べ床面積)の割合
建蔽率と容積率に関しては建物の確認申請書の第3面に記載されいています、これに増築する建物の面積を加えても余裕があれば大丈夫です。
例えば庇やカーポートなど開放性のあるものは先端から1mは建蔽率に参入しない、駐車場は延べ床面積の1/5までは容積率に算入しない、などなど。
上記の「開放性のあるもの」も柱の間隔や天井高さなど細かく規定されています。
構造・内装制限
地域によっては構造や材料の規定があります(主に防火関係)
法的根拠もないのに木材でガレージをDIYするんじゃない!燃えるぞ!!
隣地境界線との距離
地域によって隣地境界線から50㎝とか1mの部分には建築してはいけませんという規定があります。
(地域により規定を満たしていれば0cmのところもあります)
前面道路とのセットバック
前面道路が4m未満の場合、道路中心線から2mの範囲には建築してはいけません。
緊急車両が通れるようにするためですね。
(反対側が川などの場合は道路が4m以上となるような位置)
建物を建ててから地域地区が変更になった場合
既存家屋が建ってから防火地域になったとかですと、物置などを増築した際に既存家屋も現行法に適応させなくてはいけないというルールがあります。(既存遡及)
物置1個置くために家屋を耐火建築物にしなくてはならない、なんてことにもなりかねません。
結論
とまあここまでうだうだ書いたものを読んでくださった方ありがとうございます。
そしてここまで読んでくださった方にはもうお分かりですね。
素人に適法な増築は無理!!!!
全部調べて法に合致させて申請まで個人でできたらもう建築士とれるんじゃないでしょうか。
私自身、新築以外を主にやってる設計事務所で働いていますが、なるべく増築・改築にはならないよう計画しろと言われています。
確認申請が必要な場合、現状違法建築でないかもチェックしなくてはいけません。
違法建築の場合、申請しても検査に通らないor違反を直すくらいなら建て替えたほうが安いってケースがかなりあります。
結論:素直にプロに任せる、法律に疎そうな業者には突っ込みを入れてみる。
今回は増築についてご紹介しました。
次回は増築じゃないDIYでも法律違反になりうる事例をご紹介します。